平座・平坐(へいざ/読み)の意味に「あぐらをかくこと」を含めている日本語辞典がある
コトバンクで平座・平坐(へいざ)について調べると、出典として三省堂 大辞林 第三版、精選版 日本国語大辞典、小学館 デジタル大辞泉の3つの辞典で「あぐらをかくこと」が用語の意味として掲載されていました。


朝日新聞社の登録商標であるコトバンクという複数の辞典・辞書から用語を横断検索するサイトでの「平坐・平座」の検索結果では用語の意味として「あぐらをかくこと」が記載されています。
「コトバンク」の特徴は、用語解説の信頼性を重要視している点です。掲載している辞書は実績のある出版社や、その分野においての知識が豊富な企業などから提供されたもので構成しています。
コトバンクについて
コトバンクでは信頼性を重視して、実績のある出版社や知識が豊富な企業から提供とのことですが、この「平座・平坐(へいざ/読み)」の意味「あぐらをかくこと」もそうですが、他にも調べただけでいくつか疑問がある用語説明があります。国宝 病草紙の題材「小舌の男」が改ざんされていないか検証する
平座・平坐(へいざ/読み)の意味が「あぐらをかくこと」ではなく正座・正坐と説明しているサイトや大学がある
最近、高台院像(木造、豊臣秀吉の正室であるねね)の座り方を調べていて、本願寺の「一般作法―勤式指導所―浄土真宗本願寺派」という作法と荘厳について解説しているサイトを見つけました。
その時に調べていたのは胡跪(こき)についてですが、この本願寺の説明では足偏の䠒跪となぜ漢字が少し違うのかと考えながら、一通り法要や儀式における作法について読んでいたところ、正座の姿勢についての解説で以下の注釈を見つけました。
〔注〕従来は「平座」と呼称したが、法式規範では「正座」と表現を改めた。
正座(せいざ)の姿勢 一般作法―勤式指導所―浄土真宗本願寺派
正座の姿勢についての説明を読むかぎり、あぐら(胡坐)ではなく、よく正座を殆どしたことがないんだろうなという人が発言する足が痺れるといわれる、現代での正座と同じ座り方ではないだろうか。
注釈を読むと「従来は平座」と呼んでいたがということは、浄土真宗、本願寺ができた時代には「平座、平坐」が今の「正座」という意味とは違うのだろうか?
なぜ法式規範では「平座」を「正座」と改めないといけなかったのか気になりますね。
「平坐、平座」についてGoogle検索で調べていると、いくつか中国語のサイトが検索にヒットしました。
平坐
平坐又叫正坐、安坐等,即以膝居地,小腿平置于地,臀部贴于脚后跟,就像跪坐一样。坐时身体挺直,眼睛平视,是最体面、权威的坐法。
汉代以前,古人大多采用平坐。
平坐 宅控看过来:坐对了也能养生,跟古人学学传承2000多年的“养生坐姿”
正直なんのサイトなのかもわかりませんが、「平坐」でgoogle検索をしていたら見つけたサイトです。平坐が「あぐら(胡坐)をかくこと」とは一言も記載がないように読めます。
平座とは、正座、楽座などとも呼ばれ、膝を地面につけて、ふくらはぎを地面に平らにして、お尻をかかとにつけて、膝をついているような状態のことをいいます。
平坐平坐又叫正坐、安坐等,即以膝居地,小腿平置于地,臀部贴于脚后跟,就像跪坐一样。坐时身体挺直,眼睛平视,是最体面、权威的坐法。汉代以前,古人大多采用平坐。
DeepL翻訳ツール
追記 パソコンでDeepL翻訳を見ていたら気になりませんでしたが、スマホの場合は、画面いっぱいにCookieの使用許可表示がされるかもしれません。グーグル翻訳では翻訳を確認していません。追記終わり
安坐が楽座と訳されている?安坐と楽座は同じ座り方なんだろうか。
最近はGoogle翻訳を使わず、DeepL翻訳というニューラルネットワーク技術を使った機械翻訳サイトを利用している。たまに変な日本語訳になる場合もあるがいい感じに訳されているような気がする。
また、他にもいくつか中国語のサイトを見つけましたが、必要であれば追記していきます。
平坐の姿勢
平坐というのは、らくに坐ることですが、胡坐(あぐら)をかくことではなく、普通に言う正坐を指します
龍大はじめの一歩
-龍谷大学『建学の精神」- 95(右下記載)ページのみ切り取り「96-97/108の右側」
龍谷大学の宗教部のパンプレットのようなものでしょうか。そこに、平坐の姿勢について説明が記載されていました。(上記の引用の太字、赤いラインマーカーは強調のため、追記しました)
寛永16年(1639年)、西本願寺13代宗主良如が、本山阿弥陀堂の北に僧侶の教育機関として設立した学寮を起源としている
龍谷大学 wiki
浄土真宗は歴史の勉強でうっすらと覚えがありますが、浄土真宗本願寺派ということで、一般作法―勤式指導所―浄土真宗本願寺派と同じという認識でいいのかな。
親鸞(しんらん、承安3年4月1日 – 弘長2年11月28日 [注釈 5])は、鎌倉時代前半から中期にかけての日本の仏教家。浄土真宗の宗祖とされる[注釈 6]。
親鸞 wiki
鎌倉時代の時点でも平坐は正坐・正座なような気がしますが、平坐はそれぞれ場所や人によって意味が違ったということなんだろうか?ますますコトバンクに掲載されている日本語辞典の「あぐらをかくこと」がどこから来たのか気になります。
日本古代における倚坐の史的研究に「平坐」がでてくるが正座なのか、あぐらなのか?
jStageのサイトで日本古代における倚坐の史的研究(福井晃一 千葉大学工学部)という論文?を見つけたので、「平座・平坐」についても取り上げられていたので気になった個所を引用する。
jStageは日本国内の学術論文を取り扱っている電子ジャーナルのサイトとのこと。歴史の疑問を調べているとよくgoogleの検索結果でヒットすることが多い。
中世から近世にかけ書院造が完成し,間仕切りと畳が敷詰めとなった建築では,屋内における各種の行事も平坐で行われることが多く,平坐の必要がなくなっていったことだろう
日本古代における倚坐の史的研究 福井晃一 千葉大学工学部
最後の「平坐の必要がなくなっていったことだろう」は「倚坐の必要がなくなって」の間違いだろうか?畳の上に平坐することになったから、椅子を使わなくなったということ?
絵巻物などにも,寺院の内部の床の上に多くの床子を置き,その上に僧達が平坐したり,椅子の上に平坐して説教している場面も見られる。
日本古代における倚坐の史的研究 福井晃一 千葉大学工学部
ここにでてくる僧達が平坐というのは座り方だと思うが、朝日新聞関連のコトバンクの横断辞典検索で記載される意味の「あぐらをかくこと」なのだろうか?コトバンクで「平座・平坐」の辞典として三省堂 大辞林 第3版、小学館の精選版 日本国語大辞典が掲載されているが、どちらも「あぐらをかくこと」の意味が含まれている。
平座・平坐の用語の意味が日本では「あぐらをかくこと」に変わったとしてどの時点で独自の使われかたになったのか?
中国語のサイトで見つけた説明も検証する必要がありますが日本語辞典の全く説明のないものよりは一見説得力のある解説に感じましたし、日本でも古くからある宗教での作法の説明もいくつか見つけました。また漢字は見ただけでだいたい意味がわかったりするものです。なぜ平坐・平座という用語が「あぐらをかくこと」になるのか、日本での出典を知りたいです。
※浮世草子・元祿大平記(1702)七「平座(ヘイザ)居眠りなどする」 〔穆天子伝‐五〕
出典 精選版 日本国語大辞典 平座・平坐(読み)へいざ
この「平座・平坐(読み)へいざ」のページの精選版 日本国語大辞典の解説には注釈として江戸時代の1702年(元禄15)の浮世草子に出てくるようです。
平座には座り方以外の意味もありますので、くずし字や前後の文章も見たいところです。
仮にこれの平座が「あぐらをかくこと」だとして、年代的に江戸時代なので新しすぎますね。もっと古い出典はないものでしょうか。
穆天子伝をGoogle検索すると、
『穆天子伝』(ぼくてんしでん)は、周の穆王の伝記を中心とした全6巻からなる歴史書
穆天子伝
中国の春秋戦国時代あたりの古い歴史書みたいですが、江戸時代の元禄太平記と何か関連性があるんだろうか?なにも注釈に説明がないので、最初みたときは、目次か何かと思いました。穆天子伝は元禄太平記の内容として取り上げられるということかな。ここはまだ読み切れてない。
元禄太平記 170コマから7巻。左下あたりに周公と書いてあるから、なにか穆天子伝‐五から引用しているみたいなことなんだろうか。これも調べる必要ありそうか。
西鶴全集の下卷で著者は井原西鶴に関しては502コマ目左ページから、元禄太平記巻の7。
3つほど元禄太平記の7巻目をぱらぱらと読んでみたが、コトバンクの注釈にある七「平座(ヘイザ)居眠りなどする」を見つけられなかった。一旦保留。くずし字は勉強中なので読めるようになりたい。
さすがにNHKの大河ドラマの原作に使われた小説?から辞典に引用とかではないだろうから、じっくり古典を読むしかないかな。さらに調べるには。
『元禄太平記』(日本放送出版協会 1975年 のち角川文庫、徳間文庫)大河ドラマの書き下ろし原作
南條範夫 作品 wiki
2020/9/14 追記 とりあえず朝日新聞関連の辞書横断検索サイトのコトバンクにある平座・平坐について精選版 日本国語大辞典の解説にある注釈に「平座居眠りなどする」がどこに記載されているかぱっと見では見つけられなかったので、元禄太平記の最初から流し読みしたら記載されているのを見つけました。ほぼ内容は理解できていませんが・・・
国立国会図書館デジタルコレクションのホームページで「江戸時代文芸資料. 第五 著者 国書刊行会 編 出版者 国書刊行会 出版年月日 1916」の173コマ目 左ページ上側6行目に
門弟講談の席へ臨むに、袴を許さず、假にも平坐居眠りなどするを見ては、
江戸時代文芸資料. 第五 著者 国書刊行会 編 出版者 国書刊行会 出版年月日 1916 173コマ目
記載を見つけました。前後の文章とを見ながら読解する必要がありますが、これが平座について「あぐらをかくこと」の意味で使用されているのか引き続き検証します。 2020/9/14 追記終わり
平座・平坐についてなぜ日本語の辞典と中国語の解説では全く意味が異なるのか疑問が残る
当然、中国語で書かれた記事の検証は必要ですし、日本の環境などで言葉の意味が変わることがあるかもしれません。しかし、そこには必ず理由や出典があるはず。日本語辞典には意味が載っているだけで、なぜなのかの詳細が記載されていませんでした。
引き続き検証します。
アイキャッチ画像の出典の詳細情報と加工について
出典:江戸時代文芸資料. 第五 国書刊行会 編
「国立国会図書館デジタルコレクション」に収録されているデジタル化資料のうち、個々の画像の書誌情報の公開範囲の記載が「インターネット公開(保護期間満了)」となっているもの
アイキャッチ画像は上記を基に以下の加工を行っております。
- 江戸時代文芸資料. 第五 国書刊行会 編の170コマ目。元禄太平記7の左側のページのみ画像を切り取り