病草紙の「小舌の男」に奇妙な道具の使い方が描かれている
アイキャッチの画像は京都大学附属図書館の京都大学貴重資料デジタルアーカイブにある病草紙の写本と思われるものですが、他のサイトのは原本だったり別の写本・摸本だったり、基本的には同じ絵図をいくつかのサイトで鑑賞することができます。
赤丸は、角高坏?を逆さにしていると思うのですが、仮に使っていたとしてもそのまま灯明皿をおけばいいはずが、なぜか逆さにして利用している絵が病草紙の「小舌の男」に描かれています。(食事の皿などを載せている台 精選版 日本国語大辞典の解説絵図参照)
黄色い矢印は、足のかかとから何か紐がでてる?と思ってつけたのですが、火の粉で舞い降りたときの煙かもなので保留(e国宝 病草紙 小舌の男などだとかかとの部分が赤い)、煙にしては違和感を感じるが。
上記のページ、2020年5月末あたり見れたはずですが、6月26日時点ではアクセスできなくなっていましたが、幸い保存されていた。「対談 加須屋 誠×山本 聡美 平安絵巻の傑作「病草紙」、その全貌に迫る 『病草紙』(中央公論美術出版)刊行を機に」こちらで紹介されている書籍はぜひ読みたいですが、少々お高い。
明治時代に出版された枕草紙の注釈を見ると、「たかつき」を逆さにして使用するとは書いていないが、元ネタはいつからなんだろうか。
標註枕草紙読本. 巻4著者[清少納言 著][他] 出版者 弦巻書肆 を加工しています。
加工内容
・41/75 右ページ 注釈 の部分画像切り取り
国立国会図書館デジタルコレクション
標註枕草紙読本. 巻4(KuroNetくずし字認識ビューア 解析を利用する場合はログインが必要)について調べました。
たかつきにまいりたるおほとのあぶらは、高坏にともしたる燈也
よの常(普通)の灯台ならてひきき(低い)ゆえ髪の毛などもよく見ゆとの主也
くずし字を読み始めたのが今年(2020)5月途中になってから、ほぼKuroNetくずし字認識システムを利用してなので、間違いなどあると思いますが、逆さでたかつきを使う注釈は明治時代の時点でなかった可能性が高いのではないだろうか。
タイトルに病草紙の改ざんについて検証すると書いているのに、なぜいきなり「枕草紙」?「明治時代」?と思われるでしょうが、この内容を頭の片隅に入れ、以下の各情報を読んでみてください。
高坏(たかつき)を逆さにして利用する初出典についての疑問
「176段 宮 に は じめ て い りた る こ ろ」 の くだ りに,”高 杯 に まい らせ た る御 殿油(お お とのあぶ ら)な れ ば,髪 の筋 な ども,な か なか昼 よ りは顕証 に見 えて まば ゆけれ ど…”と あ る.こ こで 言 う高杯 は,低 い灯 台 と して使 用 して い るわ け で あ る(注 釈3)に,”高 杯 を逆 さに 伏せ,に して,台 の尻 に灯 油 皿 を載 せ る と,灯 火 の位 置 が低 くな って…”と あ る.多 くの国学 者 は,こ の注釈 と略 同一 の事 を,記 述 して い るか ら,定 説 に な ってい るのであ ろ う).
高杯(た かつ き)型 灯台 について – J-Stage
枕草子の段については、どこで文章を区切るかで人によって?違いがあるようだ。(私が枕草紙で覚えていることは、春はあけぼのとかそんなレベルなので何も言えないが、現代語訳とくずし字を比較する際に非常に面倒であった。)
わざわざ「たかつき」を逆さにしてそのうえに灯油皿をとなっているのが多くの国学者(誰の事?)の定説とのこと、しかし「たかつき(土器茶碗などを高くしたものが基本という理解)」にそのまま注いで使っただけだと思うのだが、なぜ逆さにまた角高坏を使う必要があったのなら、そのまま使えばよいと思うなど疑問がつきない。(「たかつき」については「高杯」でgoogle検索トップに表示される記事の強調スニペットとしての妥当性を『貞丈雑記』で調べた結果と比較して検証をする。の記事を参照)
(3) 荻 谷 朴 校 注: 新 潮 日本 古 典 集 成 枕 草 子 下, p.69, 新 潮 社 (昭50)
高杯(た かつ き)型 灯台 について – J-Stage
高杯(た かつ き)型 灯台 について – J-Stageで上記書籍の注釈に枕草紙のたかつきの使い方が逆さであると記載されているが、初出典は枕草紙などにして病草紙の「小舌の男」の逆さたかつきの絵図が当時に描かれたものとする証拠にしたい人たちがいると考えている。しかし、明治時代の枕草紙の注釈を見るとその言及はないので、本当に書いてあるとしたら、昭和50年の時点が初出ではないだろうか?新装版はあるようだが、昭和版での検証が必要かと思う。
高杯(た かつ き)型 灯台 について – J-Stageの記事では他に逆さでたかつきが使われていた可能性について言及しているが、2020年6月27時点では保留とする。私が疑問に感じた病草紙と枕草子についてだけ取り上げた。平安時代には、大正時代や昭和はまだ訪れていなかったとだけ書いておく。
コトバンクの「高坏(たかつき)」の説明に2016年8月時点ではなかった病草紙「小舌の男」の画像と思われる一部と枕草紙の一節について記載がある。
2020年6月27日現在、朝日新聞社の登録商標である「コトバンク」という辞書横断検索と思われるサイトで「高坏(たかつき)」の辞典・辞書の一つに以下のように病草紙の「小舌の男」の画像の一部と思われるものと一緒に、枕草子の文章の一部が掲載されています。
② ①をさかさにして、その上に灯明皿を置いたもの。
※枕(10C終)一八四「たかつきにまゐらせたる御殿油なれば」
出典 精選版 日本国語大辞典について
高坏(読み)たかつき コトバンク
「高坏(たかつき)、高杯?」を逆さにして灯明皿を置いて利用する絵図(病草紙)と全く関係のない枕草子の184段「たかつきにまゐらせたる御殿油なれば」 を出典とすると読み取れる、
しかし、2016年8月(AUGUST 28, 2016)の時点でどなたかが保存されていたのか収集の対象になっていたからかわかりませんが、保存されているのを確認すると、上記引用の精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典についてはまだ追加されていないように見えます。
また高坏を逆さにして、底(土居(つちい))の上に火皿を置き灯台の代用にしていた。
出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
見直している最中に、2016年8月(AUGUST 28, 2016)の時点でも小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)の説明に文章で逆さについて書かれているのを確認した。
Wayback Machine は、インターネットアーカイブ(Internet Archive)が保存しているウェブサイトを閲覧できるサービスです。
Internet Archive “Wayback Machine” について
国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)
2009年4月23日の正式発足時は、同社と講談社、小学館、朝日新聞出版の各社が提供するものを核とした44辞書・事典の計43万項目を網羅する。
コトバンク
朝日新聞文化財団による文化財保護活動への助成による「病草紙」の修復事業
公益財団法人である朝日新聞文化財団による文化財保護活動への助成金として2010年、2011年に京都国立博物館にある「病草紙」の保存修理事業の助成が行われているようです。
20文化財に総額2600万円を助成
朝日新聞文化財団は2011年度以降に実施する「文化財保護に関する助成対象事業」を決定しました。申請のあった46事業の中から、「国宝病草紙」など20件に総額約2600万円を助成します。
国宝・病草紙 保存修理事業(京都国立博物館)
2010年に選定した文化財保護活動への助成
朝日新聞文化財団 助成について 助成中、及び過去に助成した文化財保護活動の一覧 2010年決定:2011年度実施事業
「被災地特別枠」など総額4780万円を助成
朝日新聞文化財団は、2012年度以降に実施する文化財保護助成の対象事業として「国宝・琉球国王尚家関係資料保存修復事業」(那覇市歴史博物館)など21件(助成額・計4780万円)を決めました。
56事業の助成申し込みの中から選んだもので、東日本大震災の被災地からの申請については特別枠を新設し、福島県相馬市の「相馬宇多郷の神楽用具整備事業」など10件・計1000万円を助成することにしました。
国宝・病草子保存修理事業(京都国立博物館)
2011年に選定した文化財保護活動への助成
朝日新聞文化財団 助成について 助成中、及び過去に助成した文化財保護活動の一覧 2011年決定:2012年度実施事業
2011年度分のは、病草”紙”の間違いではなく、枕草子も枕草紙など呼び方がいくつかあるようだから、それと同じだろうか。
病草紙の題材「小舌の男」の調査の現状
令和2年(2020年)6月27日時点
平安時代にたかつきを逆さにして使用する証拠がいくつか見つかりましたが、自分の中では病草紙の題材「小舌の男」の絵画に信憑性を持たせるために戦後以降に作られた情報という認識です。引き続き検証します。
病草紙の題材「小舌の男」の疑問点の検証での目標
- 日本の国宝で平安時代の絵巻物 病草紙の題材「小舌の男」が改ざんされていると考えるのは、私の勘違いであることを検証、証明する
- くずし字が読めるよう勉強する
アイキャッチ画像の出典の詳細情報と加工について
出典:病草紙(京都大学附属図書館所蔵)
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ(https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/)
アイキャッチ画像は上記を基に以下の加工を行っております。
- 疑問に感じた箇所を円で囲んだ、矢印で示した。
- 焦点を当てるために画像を切り取り