眼病の男(国宝・病草紙)の現代語訳と絵巻物の絵の違いに違和感を感じた
針をた(立)てつ、いま(今)はよくなりなむとていで(出)ゝい(去)ぬ、そのゝち(後)はいよいよ見えざりけりつひにかため(片目)はつぶれはて(果)にけり
眼病の治療 医療法人社団 宏仁会小川病院 蔵方資料館
自分でもくずし字を読めるように学習中だが、現代語訳と思われる内容があったので引用しておく。
医療法人社団 宏仁会小川病院 蔵方資料館というホームページの現代語訳を見ると、針治療をして片目がつぶれたとなっている。しかし、国宝 病草紙「眼病の男」の絵巻物を見ると、目が既に流血している状態で医師と自称する男が針を目の前にもって、周りが興味津々とばかりに集まっている様子に見える。
アイキャッチに使用している京都大学貴重資料デジタルアーカイブにあった病草紙の写本とは違い、病草紙 眼病の治療(e国宝)で見た方が拡大もできてわかりやすいかもしれない。私には左目に行われるようとしているように見える。
眼病の男(国宝・病草紙)を見れるいくつかのサイト一覧
京都大学貴重資料デジタルアーカイブにあった病草紙の写本とされる画像をアイキャッチに使用しているが、病草紙(やまいのそうし)(京都国立博物館)や病草紙 眼病の治療(e国宝)での画像が原本?(版本/刊本)だと思われる。
眼病の男(国宝・病草紙)の角盥(つのだらい)らしき物を持つ女性が気になった
盥は中に水や湯を入れ、顔や手足を洗う器である。「角盥」は平安時代にもっとも一般的に使 われていた木製の盥で、漆が塗られ蒔絵が施される。左右に持ち運びのための角状の取っ手が二本ずつ付いている。同じように左右に小さな半円状の丸い取っ手が付いたものは耳盥」と呼ばれる
角盥(つのだらい) 彩る調度の品々・貴族の生活・風俗博物館~よみがえる源氏物語の世界~
なぜ国宝 病草紙「眼病の男」(題材)の女性が角盥(つのだらい)を持つのに違和感を感じたのかというと、取っ手らしきところを持っていないのもそうですが、角盥(つのだらい)(彩る調度の品々・貴族の生活・風俗博物館~よみがえる源氏物語の世界~)のサイトの角盥(つのだらい)を見ていたので、単純に常に持っておくものなんだろうかとすぐに感じたからです。
春日権現験記も角盥(ツノダライ)を使っている場面がある
春日権現験記. 第9軸 板橋貫雄//〔模写〕明治3(1870)
インターネット公開(保護期間満了)
国立国会図書館デジタルコレクション
角盥(読み)ツノダライらしき物に焦点を当てるため、全体から画像を切り取り
たまたま春日権現験記という鎌倉時代の絵巻物の絵ばかりみる機会があったのですが、角盥(つのだらい)が置かれているシーンがいくつかあり、上の引用画像はそのうちの一つです。
お坊さんらしき人に櫛で整えてられているもしくは散髪・剃髪場面かと思いますが、脇息(きょうそく)を対象者の前において、角盥(つのだらい)を置く場面がこの記事で検証している国宝 病草紙「眼病の男」との比較に使えると思いました。
ただ、他にも三か所で角盥(つのだらい)が置かれているのを確認したが、大きさが違うので違う種類なんだろうかとかは気になった。
角盥(つのだらい)について重さ・重量などを知りたかったのですが、調べた限り掲載されているのを見つけられませんでした。角盥(つのだらい)をみるかぎり、また左右に取っ手が2本ずつなので一人で持ち運びするような道具ではないのでは?と思いますが、さらに調査したいですね。
※延喜式(927)三四「手洗 径一尺五寸。深五寸」
盥(読み)タライ コトバンク
盥の大きさは共通なのかとか、いろいろ分からないことが多いですが、一例としてたらいの大きさが朝日新聞関連のコトバンクに記載がありました。
眼病の男(国宝・病草紙)の現代語訳について気になる記事を読んだ
使用人で目が見えないのは大変だったと思います
医学部に入りたい高校生が古文と日本史を勉強するべきである理由
角盥を捧げている下仕えの女の表情がなんとも言えないです
医学部に入りたい高校生が古文と日本史を勉強するべきである理由
コンパクト版 日本の絵巻7(小松茂美 編 中央公論社?)から引用した現代語訳と思われる文章には、”小紋高麗縁の畳を敷いた部屋”、”後ろの部屋に控えて治療の様子を見守る立膝の男がこの家の主人だろう”とこの方のブログでは記載されています。
平安時代、鎌倉時代あたりの畳の縁の扱いについては、さらに詳細を調べる必要がありますが、病草紙 眼病の治療をみると、使用人や下仕えとされる人たちが小紋高麗縁の畳に居て、家の主人とされる男が板の間にいるという不自然な形に描かれています。また、奥の壁などを見ると身分の高い人の建物に見えないや座布団らしき物からずれて座っている?など疑問がつきません。
付録:装束以外の有職故実 畳の縁(へり)を読むと平安時代には厳しいルールはなかったとのことですが、わざわざ装飾ありの畳の縁を作るなら身分の高い人からいきわたるのではと考えると疑義があるので別記事で平安時代などの畳の縁について取り上げたいと思います。
畳の縁の模様については、単純に装飾として始まったのか、畳がある程度量産されはじめたから身分の違いなど有職故実として始まったのかなどによって話が全く変わってくると考えるからです。
また、アイキャッチで示した病草紙「眼病の男」で角盥(つのだらい)を持つ女性は、別の箇所に描かれていた人ではないのかと思っているので、それは別記事で取り上げる。
眼病の男(国宝・病草紙)のくずし字を読めるように勉強する
よく利用させていただいているのは、くずし字認識ビューアという人文学オープンデータ共同利用センターが運営しているKuroNetくずし字認識サービスというディーブラーニング(AI)を用いた多文字のくずし字OCRサービスです。
基本的にはIIIF (International Image Interoperability Framework)に準拠した画像を対象としているようですが、画像だけでも利用できる形も予定しているみたいです。
以下は京都大学貴重資料デジタルアーカイブにある病草紙で一文字認識を行う場合のリンクです。(解析にはログインが必要です。Googleが提供するFirebase認証を利用してGoogle,Facebook,Twitter,emailのアカウントでログインできます)
病草紙の解説をしてそうな書籍が販売されているが値段が高い
読書人紙面掲載 特集という記事で病草紙の記事があったのですが、ホームページをリニューアルしたためか、該当ページにアクセスできませんでした。
幸いwebarchiveというサイトでどなたかが保存されていたようで、私も記事タイトルだけ読んだだけでブックマークしただけだったので助かりました。
対談 加須屋 誠×山本 聡美
平安絵巻の傑作「病草紙」、その全貌に迫る
『病草紙』(中央公論美術出版)刊行を機に
中央公論美術出版より加須屋誠・山本聡美編『病草紙』(B4判・二六四頁・二五〇〇〇円)が刊行される。
対談 加須屋 誠×山本 聡美 平安絵巻の傑作「病草紙」、その全貌に迫る 『病草紙』(中央公論美術出版)刊行を機に
現代語訳も掲載されているのかなと参考にしたいのですが、ちょっとお値段がしますね。
題材「眼病の男」を含めて国宝・病草紙は保存修理事業によって修復されている
国宝・病草紙 保存修理事業(京都国立博物館)
2010年に選定した文化財保護活動への助成 公益財団法人 朝日新聞文化財団
国宝・病草子保存修理事業(京都国立博物館)
2011年に選定した文化財保護活動への助成 公益財団法人 朝日新聞文化財団
国宝・病草紙は2010年、2011年に公益財団法人 朝日新聞文化財団による助成が決まり、保存修復作業が行われたようです。
国宝 紙本著色病草紙 京都国立博物館
実績 株式会社岡墨光堂 文化財の保存/修復 絵画・書跡分野における国宝・重要文化財等の保存修理(京都市)
平成25年~
国宝・重要文化財等の保存修理を手掛ける株式会社岡墨光堂が国宝・病草紙の保存修理事業を担当したのかな。
国宝
病草紙 9巻[4](京都国立博物館蔵) – 1952年国宝に指定。「風病の男」「小舌のある男」「二形の男」「眼病の男」「歯の揺らぐ男」「尻に穴多き男(痔瘻の男)」「陰虱をうつされた男」「霍乱の女」「口臭の女」の9図。
病草紙
病草紙の題材「眼病の男」の疑問点の検証での目標
- 病草紙の題材「眼病の男」が改ざんされていると考えるのは、私の勘違いであることを証明する(元は、右目から血は噴き出していなかった、つのだらいを持った女性は存在しなかったという勘違い)
- くずし字が読めるよう勉強する
2020年7月7日時点では国宝・病草紙が改竄されていると考えるのは、私の勘違いであるということを証明するには至りませんでした。引き続き国宝・病草子について改ざんされていないことを証明する検証をしていきたいと思います。
アイキャッチ画像の出典の詳細情報と加工について
出典:病草紙(京都大学附属図書館所蔵)
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ(https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/)
アイキャッチ画像は上記を基に以下の加工を行っております。
- 掲載ページにあるリンク先 Miradorのツールを利用して、人物に焦点を当てて画像を切り取り
- 疑問に感じた箇所を円で囲んだ